アメリカ文学研究とSF/ファンタジーの接点を探る
本研究会は、SFやファンタジーといった非リアリズム的な空想的文学形式に興味を持つ研究者の交流と意見交換の場である。SF/ファンタジーのスタイルや様式、あるいはその解釈の方法論を、いかに既存のアメリカ文学研究に導入し活性化を図りうるかという問いを、その出発点とする。その問いに答えるために、アメリカ文学/アメリカ研究の一ジャンルとして非リアリズムの方法論を再検討するとともに、特定の作家をSF=大衆文学と芸術文学を横断するものとして読み直す、文学における「」やリアリティの意味を問い直す、ある時代やジャンルに共通するモードをSF/ファンタジー的視点から再検討する、など、参加者各自の問題意識を提示しあいながら、情報交換や議論、資料収集など多岐にわたる活動を展開する。
本ワークショップでは、既存のアメリカ文学研究に、SF/ファンタジー研究がどのような貢献をなしうるのか、また一方でアメリカ文学の枠内で、いかなる方法論によってSF/ファンタジーの研究が可能か、発表者による実践例の紹介なども交えながら、フロアの参加者とともに考えたい。有馬はJack Londonの"The Red One"を中心にUrsula K. Le Guinの"The Stars Below" に触れながら、そのfantastic な表象について述べる。高田は Vineland と Mason & Dixon を ケーススタディとして、Thomas PynchonのSFモードをディスコースの側面から考察する。 長澤は過去の非リアリズム文学研究を比較検討しながら、そもそも非リアリズム形式はどのような「リアリティ」を構成するのかを問い直す。渡邉は60年代以降のフィクションを中心に、ポストモダン小説にみる終末の観念とSF/ファンタジー的モードの関連を検討する。