相愛大学 山下 昇
世界の発展においてメディアの果たしてきた役割は想像以上に大きい。メディアの発展の歴史においてアメリカが果たしてきた貢献は特筆に値するが、それはアメリカという巨大な空間を克服することがアメリカ社会の発展において至上命題であったことと無関係ではない。空間を越えてコミュニケーションを成立させるためのさまざまなテクノロジーの開発がアメリカにおいて19世紀以来急速に進み、多様なメディアが流通することとなった。そのようにして作り出されてきたメディアがアメリカ人の生活や考え、行動様式と感性にどのような影響を与えたのか、それをアメリカ文学がどのように表現してきたのかを見るのが、本シンポジウムの目的の一つである。また、メディアの発展は文学のあり方自体に影響を与えたと思われる。アメリカ文学がメディアの発展に伴ってどのように変容したのかをも併せて考えることとしたい。
一連の作業を通じて、メディアとアメリカ文学がいかに共振しているか、交錯しているか、そのような現象を誘発する根本には何があるのか、ということに新たな知見が得られれば本シンポジウムの所期の目的はひとまず達成されるだろう。