同志社大学 田口 哲也
文学史の中でケネス・レクスロスはビートやサンフランシスコ・ルネサンスに関連して言及されることが多いが、彼ほど詩と詩人を民衆に近づけようと努力した文学者はいなかった。ジャズ・ミュージシャンとの競演、高められた話しことばとしての日常語による詩作の実験などなどの文学上の革命的な実践に加えて、レクスロスはラジオ番組へのレギュラー出演者、新聞の常連コラムニストでもあった。消費されるものとしての、商業資本による文学の大衆化に対するオルタナティヴな文学の普及を彼は目指していたともいえる。今回のシンポでは、このようなレクスロスのメディアに対する自律した精神の伝統の本質を探り、彼の精神を受継ぐネット時代のアメリカ現代詩人の現在についても言及しつつ、アメリカにおけるメディアと文学の関係について考えてみたい。