神戸大学 山本 秀行
90年代以降の多文化主義時代のアメリカにおいて、マイノリティのアーティストによるsolo performanceが注目を集めるようになってきた。マイノリティのsolo performanceは、商業ベースに乗りにくく、低予算で製作する必要性があることから、映像・音響機器などマルチメディアの使用により舞台上唯一の演技者(=アーティスト)の機能を補強する。そして、その多くが、auto-performanceと呼ばれる自伝的なsolo performanceであり、アメリカ主流社会において周縁化されたマイノリティとしての自身(あるいは家族・民族)の体験を元に、自らの生身の身体を舞台上に曝け出し、一つの表現メディアとして機能させている。
本発表では、Secrets of The Samurai Centerfielder (1989)などの作品で知られる気鋭のアジア系パフォーマンス・アーティストDan Kwongのマルチメディアを使用したsolo performanceを中心に、マイノリティのsolo performanceにおけるメディアと身体のコラボレーションの可能性と意味について考察する。また、時間の許す限り、その他のマイノリティのsolo performanceとも比較検討することで、マイノリティに共通の演劇的ストラテジーを探るとともに、Dan Kwongの独自性を明らかにしたい。