1. 全国大会
  2. 第43回 全国大会
  3. <第2日> 10月17日(日)
  4. シンポジアムⅡ(8号館2階 824教室)
  5. 4.女と銃

4.女と銃

辻本庸子 神戸市外国語大学


その形状、攻撃性、瞬発性。それゆえに銃は男性性のシンボルと見なされてきた。女性が銃を持てば、護身用とただし書きがつき、女性の強さより、弱さが強調されることになる。しかしその実、現在では1100万人以上の女性が銃を所有し、4丁に1丁の割で女性が銃を購入し、銃を持った果敢な女性が映画や雑誌に登場する。もはや銃は男性の専売特許とは言えないのかもしれない。たしかに女性が非力であればあるほど、銃は手にするにふさわしい武器と言えるだろう。至近距離から打てば、たった一発の銃弾でいとも簡単に巨漢の男性の息を止めることができるのだから。

しかしながら19世紀末から20世紀初頭のアメリカ文学において、銃と女性は至近距離になかった。銃を持つ女性といえば、カラミティ・ジェーン、アニ−・オークレーといった神話的人物が周縁に浮かび上がるぐらいである。それならば、女性が銃を手にし、夫あるいは恋人を射ぬいた時、何が起こるのか。そこから新たな神話が作られていくのか。Zora Neale Hurston の Their Eyes Were Watching God を中心に、考察してみたい。