西谷拓哉著, 『メルヴィルと両義性の詩学――後期小説への測鉛』 北烏山編集室, 2026. 3. 31. A5判351頁, 4,000
概要
本書は、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』(1851)以降の長篇及び短篇小説に即して、その両義性のありようを探ろうとするものである。
メルヴィルの作品は、たとえ意味が決定不能に陥るように見るときでも、その先に通じる隘路をどこかに残している。
本書では、メルヴィルのテクストがその複雑さの内側から私たちに差し出してくるものをできるだけ細かく掬い取ろうとした。
その試みを象徴するものとして、海に投じて水深を測る器具である「測鉛」という言葉を副題として用いた。
目次
序章 メルヴィルの小説とそのフォルム――伝統と革新のあいだで
I 両義性のフォルム
第1章 『信用詐欺師』の曖昧さと構造
第2章 「バートルビー」と同語反復
第3章 交信不能の物語――「ベニート・セレーノ」における視線の輻輳
第4章 肖像画の謎――メルヴィルと『ピエール』の二重性
II 『白鯨』の描写
第5章 『白鯨』の風景
第6章 メルヴィルの複雑で奇妙な機械
第7章 エイハブの「弱さ」――感情の基底に横たわるもの
Ⅲ ジャンルとの親和と軋轢
第8章 メルヴィルの小説における死と感傷――1850年代の短篇に見る反センチメン タル・レトリック
第9章 「煙突」の構造――メルヴィルに見る家計と創作のディレンマ
第10章 喜劇のペシミズム――「林檎材のテーブル」における家庭小説の実験
Ⅳ 歴史と文化の深層へ
第11章 メルヴィルとトランスナショナルな身体――『白鯨』、『イズリアル・ポッター』を中心として
第12章 ブラック・ノイズとしての「ベニート・セレーノ」――メルヴィルとアフリカ的想像力
第13章 『ビリー・バッド』と嫉妬
第14章 D・H・ロレンスとメルヴィル――1920年代のメルヴィル・リバイバル再考
終章 元水夫の物語――メルヴィルの海洋文学における抒情性とノスタルジア
あとがき
引用・参考文献
参照したメルヴィル作品の翻訳一覧
初出一覧
索引

