概要
アメリカ文学史上最大の作家、ウィリアム・フォークナーの研究者がその半生をかけて熟成させた渾身の論考。
故郷をモデルに描いた壮大な〈ヨクナパトーファ・サーガ〉などをはじめとする、フォークナーの豊饒な作品世界を担っていたのは、緻密で躍動的なその語りの力だった…。本書は、フォークナー自身が重視した形式であり、彼の作品のひな型でもある短編小説を考察の対象とし、斬新な方法で、その創作世界に深く鋭く迫った集大成である。目次
序に代えて
第1部 フォークナーの土地
第1章 「あの夕陽」とデルタの変容――フォークナーのブルース
第2章 「乾燥の九月」における共同体のメカニズム
第3章 「黒衣の道化師」の象徴性――フォークナーのコメディア・デラルテ
第2部 フォークナーの時空間
第4章 アポクリファルな世界の「インディアン物語」―「求愛」から「紅葉」へ
第5章 「正義」――「公正な裁き」の裏側
第6章 「見よ!」――鏡に映った他者と逆転の構造
第3部 フォークナーの視点
第7章 「山の勝利」――失われた銃声
第8章 「勝利」――その裏側の真実
第9章 フォークナーの十字架――『永遠(とわ)の戦場』への出兵と帰還
第4部 フォークナーの起源
第10章 フォークナーの修業時代――薄明かりのニューオーリンズ
第11章 フォークナーと十一人の語り手たち――「ニューオーリンズ」の光とゆらぎ
第12章 フォークナーの鏡の家――「ニューオーリンズ」の語りの円環