1. 新刊書
  2. 巽孝之監修, 大串尚代 佐藤光重, 常山菜穂子編著. 『アメリカ文学と大統領―文学士と文化史』 南雲堂, 2023. 7. 29. A5判543頁, 5,800

巽孝之監修, 大串尚代 佐藤光重, 常山菜穂子編著. 『アメリカ文学と大統領―文学士と文化史』 南雲堂, 2023. 7. 29. A5判543頁, 5,800

概要

1789 年4 月、ジョージ・ワシントンが大統領就任演説を行なって以降、アメリカの歴史はつねに大統領とともにあった。行政府の長であり、米軍の最高司令官である彼らは、同時に国を表すアイコンであり、アメリカ的想像力の源でもあった。時代毎の大統領が書き残してきた日記や手記、演説原稿、手紙や政治的文書の一群は、アメリカン・ナラティヴの系譜と不可分で

ある。大統領をも文学者とみなし、大統領の歴史と文学思想史のスリリングな共犯関係を追い続けてきた巽孝之教授の退職記念論文集である本書では、教授の薫陶を受けた26 名の研究者が参集し、全く新しいアメリカ文学史のかたちを切り拓く。

目次

序章 アメリカ文学と大統領  巽孝之

第一部  独立革命から膨張主義の時代へ
第一章  建国の父は夢を見る
     ―ブラッケンリッジ『当世風騎士道』と大統領謁見の政治学 小泉由美子
第二章  掘り起こされた秘密
     ―チャイルドの『反逆者たち』における海とモンロー・ドクトリン 大串尚代
コラム① 第六代大統領 ジョン・くぃんシー・アダムズ(一七六七―一八四八)  内田大貴

第三章  ジャパニーズ・トミーと立石斧次郎
     ―「ジャクソンの時代」のアフロ=アジア  大和田俊之
コラム② 第九代大統領 ウィリアム・H・ハリソン(一七七三―一八四一)
第四章  ポーク政権と文学
     ―ホーソーン、メルヴィル、ソローの場合 佐藤光重
第五章  暴れん坊将軍から大統領へ
     ―ザカリー・テイラーとメディア狂騒曲  冨塚亮平
第六章  希望/絶望の土地としての日本
     ―フィルモアとメルヴィルのみた太平洋  田ノ口正悟
第七章  海と国家
     ―ホーソーンとビアスの海洋的想像力  竹野富美子

第二部 分裂の危機から革新主義の時代へ
第八章  リンカーンは「南部人」
     ―トマス・ディクソンによる「真実」の大統領物語  白川恵子
第九章  書き換えが作った英雄
     ―金メッキ時代のグラント将軍  松井一馬
第一〇章 終焉の終わり
     ―マーク・トウェインの「再建」とヘイズ、ガーフィールド  細野香里
コラム③ 第二一代大統領 チェスター・A・アーサー(一八二九―一八八八)
第一一章 演劇を売る/売られる演劇
     ―一九世紀太平洋巡業記にあるマッキンリーの「海の帝国」  常山菜穂子
コラム④ 第二三代大統領 ベンジャミン・ハリソン(一八三三―一九〇一)  榎本悠希
第一二章 歴史と映画と晩餐会
     ―ウッドロウ・ウィルソンの「アメリカ再生」  奥田暁代
コラム⑤ 第二九代大統領 ウォレン・ハーディング(一八六五―一九二三)

第三部 コスモポリタニズムから冷戦の時代へ  宇沢美子
第一三章 カルヴィン・クーリッジ
     ―時空を統べるテクノロジーと一九二〇年代  辻秀雄
第一四章 『ローズヴェルトの時代』と冷戦の修辞学
     ―シュレシンジャ―、エマソン、フォークナー  山根亮一
第一五章 収容者が開拓者になるとき
     ―ローズヴェルト政権の日系人収容とミネ・オオクボ  加藤有佳織
第一六章 旅するトルーマン
     ―ボウルズ、カポーティと海外への眼差し  濟藤葵
第一七章 チェッカーズ・スピーチをもういちど
     ―犬とニクソンの伴侶種宣言  波戸岡景太
第一八章 ゴー・エレクトリック・ボブ・ディラン
     ―ケネディ暗殺と対抗文化  麻生享志
第一九章 キャメロットを越えて
     ―ジョン・F・ケネディと冷戦期アメリカ文学  有光道生

第四部 ポストモダンからポスト・トゥルースの時代へ
第二〇章 喪失の時代における「普通のアメリカ人」の物語
     ―庶民的な大統領フォードとカーターの時代 中垣恒太郎
第二一章 アメリカのエレミアと女神の嘆き
     ―ポール・オースター『リヴァイアサン』にみるレーガン時代とアメリカ例外主義のレトリック  秋元孝文
第二二章 ファースト・ジェントルマン、あるいは「黒い」元大統領の体験記
     ―『アフターライフ・イン・ハーレム』にみるクリントンの肖像  深瀬有希子
第二三章 ヒーローと悪漢の狭間で
     ―大統領のパブリック・イメージと九・一一以降のアメリカ  長澤唯史
第二四章 太平洋を越える大統領
     ―惑星的主体としてのバラク・オバマ  志賀俊介
第二五章 フェイクの牢獄
     ―トランプ時代と「グレイト・アゲイン」の罠  鈴木透
あとがき
関連年表
索引