概要
現代に蔓延る〈レイシズム〉を乗り越える
ユダヤ系作家はホロコーストなどの差別や暴力を直に経験し、人種差別に対する憤りから、様々な反対運動において中心的役割を果たしてきた。本書では作家達の差別に対する表象を取り上げ、他者との確執や協力の実相を論じる。
目次
第1章 エリ・ヴィーゼル『ゾンダーバーグ裁判』:〈他者性〉を求めて
――現代米国の「ユダヤ人」と「ドイツ人」の敵対から共感へ(広瀬佳司)
第2章 対立の果て――『犠牲者』(佐川和茂)
第3章 ソール・ベローのブレイクスルー
――レイシズムを超える『オーギー・マーチの冒険』のケアの倫理(井上亜紗)
第4章 アーサー・ミラーの『焦点』における差別の構造(鈴木久博)
第5章 初期ロス作品に見られる人種意識(坂野明子)
第6章 フィリップ・ロスはアメリカの人種問題をどのように描いたか
――「アメリカ三部作」を中心に(杉澤怜維子)
第7章 ポール・オースターの描く他民族社会における他者との共生
――『ミスター・ヴァーティゴ』と『スモーク』を中心に(内山加奈枝)
第8章 ジュリアス・レスターの改宗
――黒人ユダヤ人へ(大森夕夏)
第9章 ジューイッシュ・クランズマンの不可視性と人種的両義性
――『ブラック・クランズマン』におけるサイドストーリー(中村善雄)
第10章 被差別者としての確執と融和
――アメリカ映画に見るユダヤ系とアイルランド系表象(伊達雅彦)