概要
人間精神の自由と平等を標榜し、19世紀アメリカ・ルネッサンス期を代表する思想家、ラルフ・ウォルドー・エマソン(1803-82)。
「自己信頼」を信条に個人主義を貫くエマソンは、アメリカ社会発展のシンボルとされ、社会改革者としての側面は見過ごされてきた。
「自己信頼」にもとづく個人主義と、社会に対する責務で葛藤するエマソンは、自然科学、とくに進化論をとおして、自身の改革思想を形成していく。
本書では、主に進化、人種、ジェンダーの視座から、エマソンの社会改革思想を包括的に検証し、さらに、奴隷制廃止運動と女性解放運動といった、当時の社会改革運動とエマソンの関わりを詳述、社会改革者としてのエマソンを再評価する。
また、エマソンの家庭、マーガレット・フラーやヘンリー・D・ソローとの交友関係にも焦点をあて、思想の実践も考察する。
目次
序章
第1章 自然科学と進化にみる思想の原点
1 自己信頼と社会改革観
2 自然科学への関心——「対応の思想」と信仰の確立
3 進化思想と楽観主義——神意の象徴としての上昇螺旋運動
第2章 エマソンと奴隷制
1 社会への責務と正義感——個人と社会の狭間で
2 奴隷制問題と人種観を巡って
3 奴隷制廃止運動への参加
第3章 エマソンと女性の権利
1 女性解放運動への関わり——理想の女性像との葛藤
2 「女性について」(1855)にみる女性観
3 思想の変化——1869年の講演から
第4章 家庭におけるエマソンと思想の実践
1 夫婦の関係と結婚観
2 愛と友情——フラーやソローとの交友関係を中心に
3 妻リディアンと「真の女性らしさ」
終章