1. 新刊書
  2. 伊藤詔子 『ディズマス・スワンプのアメリカン・ルネサンス ポーとダークキャノン』 音羽書房鶴見書店, 2017. 3. 30. A5版324頁, \3,200

伊藤詔子 『ディズマス・スワンプのアメリカン・ルネサンス ポーとダークキャノン』 音羽書房鶴見書店, 2017. 3. 30. A5版324頁, \3,200

概要

 

「ポーの墓場詩からゴシック・ネイチャー」、「キメラからサイボーグまで」、「〈沼地のアメリカンルネサンス〉とアメリカ文学のダークキャノン」、「ホーソーン、フォークナー、ストウ、オーツ、ポー」を場所の想像力、ポストヒューマン・エコクリティシズムで解き明かす、著者の文学研究を結実させた渾身の一冊。


目次

 

はじめに

序章 ポーのボストン帰郷と遺髪秘話の行方

1 作家生誕200年祭

2 ポーの復活

3 ポーのインディアン化と批評的先見性

4 日本ポー学会の作家生誕200年祭

Photo Library 1= 生誕200年記念切手、プロヴィデンス・フィラデルフィアとポー

第 I 部 ポーの墓場詩と花嫁の逆襲

 第 1 章 「丘の上の都市(City on the Hill)」から「海中の都市(The City in the Sea)」へ

1 水と死の夢想

2 宇宙的ナルシズム「湖に」 (“The Lake”)

3 「眠れる人」(“The Sleeper”) の朧な霧

4 超現実のトポス「夢の国」 (“Dream-Land”)

5 メランコリーの海と「海中の都市」 (“The City in the Sea”)

 第 2 章 花嫁の幽閉と逆襲─エリザベス、モレラ、ライジィーア

1 美女再生譚から幽霊譚へ

2 新たな視点─ライジィーアとモレラの第二の物語(セカンドストーリィー)

3 ゴシック・マザーへの禁じられた愛

4 母性的風景への一体化願望

5 不可思議な目の深淵に表象されたエロス的願望

6 ライジィーア蘇りのオカルトの部屋

Photo Library 2

第Ⅱ部 ゴシックネイチャー、キメラ、第二の自然

 第 3 章 ポーの不思議ないきものたち

1 ゴシック・ネイチャーとしての黒猫と大鴉

2 社会的に構築される自然

3 ポーのキメラ列伝

 第 4 章 自然表象の葛藤の海─『アーサー・ゴードン・ピム』

1 資源、商品、食糧としてのいきもの

2 儀式的記号としてのキメラ

3 転覆的記号としての雑種の身体─ダーク・ピーターズ

 第 5 章 「アルンハイムの領地」と「人生の航路」─ポーとトマス・コール

1 新たなサブライムの意匠

2 〈アメリカンサブライム〉の多様化について

3 〈アメリカンサブライム〉解体

4 アッシャーの環境の感覚とエコ・キャタストロフィー

5 天使となって地球を脱出するアッシャーとマデライン

6 第二の自然の創造

Photo Library 3= ナンタケットとブラウン大学

第Ⅲ部 ディズマル・スワンプのアメリカン・ルネサンス─ナット・ターナー、ドレッド、ホップ・フロッグ

 第 6 章 『アメリカン・ルネサンス再考』から『ブラック・ウォールデン』まで

1 1850年を巡る作家たちの動き

2 マシーセンとポー

3 黒人作家と白人作家の間テクスト性

 第 7 章 ウィルダネスの聖地、沼地のポリティックス

1 ソローと沼地

2「ナット・ターナーの告白」とディズマル・スワンプ

 第 8 章 ストウとポーの沼地

1 ストウの沼地の人(swamp-dwelling-people)、ドレッド

2 ノーフォークから終焉の地、ボルティモアへ

3 ターナーのエコーと「ホップ・フロッグ、または鎖でつながれた八匹のオランウータン」

Photo Library 4= ヴァージニア大学とリッチモンド

第Ⅳ部 ポーとダーク・キャノン

 第 9 章 ダゲレオタイプ、ポー、ホーソーン─真実の露出(レベレーション)と魔術的霊気(アウラ)のはざまで

1 新しい視覚テクノロジーと文学ジャンルの開発

2 ダゲレオタイプの出現とポーの「文学の新しい国(new literary nation)」

3 ホーソーンのロマンス論とダゲレオタイプ

4 〈光の描く絵〉としてのダゲレオタイプ

5 ダゲレオ装置が設置される〈死体置き場(モルグ)〉

6 魔術としてのダゲレオタイプ

 

 第 10 章 ポー、フォークナー、ゴシックの窓

1 人種のトラウマとゴシック・アメリカ

2 ゴシック・パラダイムの変容

3 カラーラインを横断するピム

4 プルートーの回帰

5 タイドウオーター・プランテーション

6 語り手の物語空間への入場と沼地

7 身体に空いた窓としての目

第Ⅴ部 ポーとポストモダンの世界─ルネ・マグリット、ジョイス・キャロル・オーツ、ポストヒューマン

 第 11 章 ポーを描く画家とオーツの語るポーの死後の運命

1 ルネ・マグリットの「アルンハイムの領地」

2 ポストモダン・ゴシック批評家としてのオーツ

3 初期〈エデン短編群〉の凍てつく自然の造詣

4 ポーの死後の物語『狂おしい(嵐の)夜』

5 物語る妻の勝利─「黒猫」の「白猫」への変容

 第 12 章 ポーとポストヒューマン・エコクリティシズム

1 ポー文学に追いついた21世紀エコクリティシズム

2 エコクリティシズムによるポー論の到来とポストヒューマン

3 〈ロマンティック・サイボーグ〉としてのスミス准将

4 アイデンティティの謎と不安

5 ポストヒューマン─生と死の不気味な境界線上の言説

終章 作家のトランク

1 賢治のトランク

2 ファンショーのトランク

3 ポーのトランク

4 トランクの中から見つかったポーの遺稿

Photo Library 5 マリア・クレムとニューヨーク・フォアダムのポーコテッジ

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