1. 1.John Steinbeck のTo a God Unknown を読む ――ケルト文化から見た一考察

1.John Steinbeck のTo a God Unknown を読む ――ケルト文化から見た一考察

酒井 康宏 米子工業高等専門学校


スタインベックの初期の傑作、To a God Unknown (1933)には、多くの学者や批評家が指摘しているように、心理学的、哲学的、宗教的な側面があり、なかでもピーター・リスカが指摘しているように、この作品のエピグラフに関しては、「スタインベックはもともと、10連から成るピラニアガルバの讃歌のうち最初と最後のスタンザを省き、5〜8番目のスタンザに手を加え、全体で9連から成るエピグラフ」を作り上げており、このことは中山喜代市氏のご指摘のとおり、「それは明らかに八百万の神々のうえに立つ最高の神を称えるとともに、その未知なるがゆえに、『犠牲を捧げる神』への探求を意味する味わい深い讃歌となっている。そして、ここで示唆された最高神は、キリストのそれではなく、異教の神である」ことは言うまでもない。

この考えは、まさにケルト文化における神に対する考えとほぼ同一である。この作品がケルト的な色合いをもつのは、スタインベック文筆能力の高さに他ならない。スタインベックの文筆能力は幼年期から少年期にかけて読み聞かせをしてもらった母親の影響が大変強い。しかもその母親の祖先は、北アイルランドであり、スタインベックに意識的に、また無意識的にケルト文化の影響を与えていると仮定できる。

ケルト文化研究の第一人者である鶴岡真弓氏は、「ケルト文化が世界文化の源流である」とする大胆な仮説を提示しておられるが、もしこれが真実なら、この作品の従来の解釈、インド哲学から見た樹木信仰のアプローチもケルト文化のひとつの研究領域と考えることが可能になり、これまでにない大変興味深い作品解釈になるので、発表ではこのあたりも明らかにしていきたい。

本発表では、この作品を特に作品全体の基盤をなす樹木信仰を「ドルイディズム」の観点から考察し、スタインベックの「ファランクス論」をケルト文化に根ざした自然観並びに宇宙観から考察したいと考えている。