1. アジア系アメリカ文学におけるInterracialism―異人種間結婚(恋愛)のテーマを中心に

アジア系アメリカ文学におけるInterracialism―異人種間結婚(恋愛)のテーマを中心に

愛知県立大学 村山 瑞穂


およそ異人種間関係にまつわる問題と完全に切り離されたアメリカ文学テクストなど存在しないであろうが、アジアからの移民たちやその子孫によって書かれてきた文学をアジア系アメリカ文学と定義するなら、Toshio Moriの短篇集、Chauvinist and Other Stories (1979)の序文で、日系人の閉じられたコミュニティ内部のみを描いているかに見える物語群の背後に歴然と存在する人種(差別)関係を看破するHisaye Yamamotoの指摘を待つまでもなく、この文学ジャンルにおいても、それは例外ではない。

ただし、ヤマモト自身がそうであるように、このテーマをより意識的に取り上げ、前景化する作家たちが存在することも事実である。今回の報告ではinterracialismに関連して、とくに異人種間結婚(恋愛)のテーマについて様々にアプローチを試みるアジア系アメリカ文学テクストを取り上げる。『蝶々夫人』以来作り上げられてきた悲劇的異人種間結婚のステレオタイプをはじめとして、アジア系アメリカに関するinterracialismにまつわる問題を時代を追って大まかに整理した上で、このテーマについて現在から未来へ向けて強いメッセージを発信する先端的テクスト(Karen Tei Yamashita, Chang-rae Lee, Gish Jenなど)の具体的分析を試みてみたい。

その際、常に白人と黒人の中間に位置づけられ、排他的移民法や強制収容などの差別に晒される一方、「モデル・マイノリティ」として他の人種的マイノリティから差異化されてきたアジア系アメリカの歴史的特殊性を見据えながら、さらなる多様性と越境に開かれてゆくアジア系アメリカ文学テクストが、「アメリカ」が抱える人種問題を白人対黒人の二項対立から放つ新しい関係性構築の可能性や困難について、どのような言説を紡ぎだしているのか考察してみたい。