1. 1.アメリカ先住民独立宣言――先住民作家William Apessの抵抗運動

1.アメリカ先住民独立宣言――先住民作家William Apessの抵抗運動

小澤奈美恵 立正大学


本発表では、19世紀の先住民説教師であり、また著述家でもあるWilliam Apess(1798-1839)がマサチューセッツ州マシュピー居留地で行った、マシュピー族の自治と諸権利を求める非暴力抵抗運動に焦点を当て、1833年にマサチューセッツ州政府に提出したインディアン独立宣言と、その経緯を綴ったIndian Nullification of the Unconstitutional Laws of Massachusetts Relative to the Marshpee Tribe; or The Pretended Riot Explained (1835)を論じる。エイプスは、アメリカ革命のエートスである啓蒙主義や先住民の文明化に用いられたキリスト教という白人主流社会の武器を用いて、白人社会に抵抗を試みている。独立宣言に倣った「インディアン独立宣言」は、ポストコロニアルの批評家、ホミ・バーバの言う「」と見做すこともでき、主流社会を茶化しながら、その価値観と権威のアンビヴァレンスを暴きだし、撹乱していく行為であった。1848年にセネカ・フォールで、女性たちが独立宣言を模して、ジョージV世の替わりに男性を告発した女権拡張宣言に先立つ先住民の布告であった。

I「マシュピー族の叛乱」“Marshpee Revolt”と呼ばれるこの事件は、以下のようなものである。マシュピー居留地には、ハーヴァード大学から監督官が派遣され、教会で先住民への説教と教育が行われることになっていたが、実際のところ、監督官は、先住民を無視して白人に説教を行い、居留地の土地や先住民布教用の基金を乱用していた。周辺の白人住人も、居留地の森林の木を勝手に伐採して持ち出していた。ピークォット族のApessは、ニューイングランドを旅して説教を行っていたが、マシュピーに招かれ、その住民と協力して、監督官の解任を求め、自ら牧師を選ぶ権利、居留地の財産である森林を守る権利を求めた。また、州政府がマシュピー族に課した不平等な法律の撤廃も要求した。Apessは扇動者として逮捕されながらも、The Advocate誌の記者らの協力も得て、要求を成就させた。

Apessの全集が1992年に出版されて以来、徐々にApessに関する研究が行われてきた。これは、アメリカ・ルネッサンス期のマイノリティの声を復活させ、この時期の文学を多様な現象として捉えるためにも欠かせない作業であろう。Apessの自伝や著作は、支配者の言葉、英語を用いているにもかかわらず、「明白な運命」とインディアン強制移住法の時代に生きる先住民の視点を提供し、白人主流文学の言説と先住民表象を書き換えている点で画期的である。Apessの活躍を可能にした地盤を、様々な社会運動から読み解いていく予定である。具体的には、第二次大覚醒運動の勃興とともに、逃亡奴隷、先住民、貧困者たちを吸収していったメソジスト派の運動、奴隷制廃止運動とチェロキー族強制移住反対運動、数々の社会改革運動、出版・報道界の発達などが背景にあり、主流作家だけでなくマイノリティや様々な階層の人々を巻き込んだ現象がアメリカ・ルネッサンスを形成しているのである。