1. 2.John Irvingの小説における親子関係

2.John Irvingの小説における親子関係

赤間 荘太 北海道大学(院)

 

本発表では,John Irvingの作品における親と子の関係を,書くという行為と結び付けて考察をしていく。彼の作品の中の多くの主人公は孤児であるか,もしくは片親のみしか持っていない。また,子は親の思想に対しては異なる意見を有しているが,親の死後になってそれを受け入れ,親の分身のように機能をするという特徴がある。

Irvingの家族観についてはDesmond F. McCarthyやSusan Gilbertなどが考察をしているが,特に作品の中の親と子の関係について詳細に分析をした論文は驚くほど僅少である。本発表ではその関係について,Harold BloomがIrvingの代表作であると述べた三作品,The World According to Garp (1978), The Hotel New Hampshire (1981), 及びThe Cider House Rules (1985)を用いて検証をしていきたい。

Irvingの小説においては,両親と子という関係よりも,片親と子という一対一の関係が描かれることが多い。The World According to Garp では主人公Garpの父親は母親であるJennyにとって出産のための道具に過ぎず,彼は子を残した直後に死亡している。The Hotel New Hampshire の母親は飛行機事故により死亡をして,主人公Johnには父親のみが残される。The Cider House Rules において,Dr. Larchは孤児であるHomerにとって疑似的な父親となり彼を自分の後継者となるように育てようと試みている。

親と子とつなぐ鍵として重要なのが,書くという行為である。子をもうけることと書くことは,どちらも自らの生物学的/文化的な分身をつくるという生産的な行為である。また,小説を生み出すという行為も,Irvingの小説の親子関係と同様に片親と子(作者と小説)という一対一の関係である。The World According to Garp においてはGarpとその母親が作家であり,二人はその執筆活動を同時に開始している。The Hotel New Hampshire では,次男のJohnが語り手として理想主義者である父親を描き続ける。また,The Cider House Rules ではDr. Larchのジャーナルが彼とその養子であるHomerをつなぐ重要なカギとなっている。

本発表では,John Irvingの小説における親子関係を書くという行為と結び付けて分析をし,さらに作者の伝記的な事実などを考察することにより,作家としてのIrving像を新たな視点で検証をしていく。