1. 4.Robert Penn Warren, Brother to Dragons における“a human constant” なる要素について

4.Robert Penn Warren, Brother to Dragons における“a human constant” なる要素について

香ノ木隆臣 岐阜県立看護大学

 

Robert Penn Warren の長篇詩Brother to Dragons (1953; 1979以下BD ) は,Thomas Jefferson の甥が1811年10月に黒人奴隷を殺害した史実を題材に,Jeffersonや作者のペルソナR.P.W. といった複数の人物が登場し,「任意の場所,任意の時代」を背景として事件をめぐるプロットが対話形式で進行する物語の体裁をとった詩作品である。作者は序文で “the issues that the characters here discuss are, in my view at least, a human constant” と述べて,この物語詩の登場人物と舞台設定は普遍的な価値観を探求しようとする作者の意思を反映させたものであることを示している。

arrenは建国の父祖Jeffersonの親戚の醜聞を取り上げて,アメリカ史の暗部に切り込むことで,アメリカ的価値観そのものの再検討を読者に促している。この作品を執筆し始めた1940年代半ばから,彼は社会性の濃厚な作品を出版したが,これは第二次世界大戦後のアメリカがソ連との冷戦状態にあり,アメリカ的価値観が称揚されると同時に,マッカーシィズムの全盛の時期にあたっていたことにその理由の一端があるだろう。

具体的には,長篇小説All the King’s Men (以下AKM )では語り手Jack Burden の成長を通して個々人の連鎖の感覚の重要性を,World Enough and Time(以下WET )では理想主義に生きることの危険をWarrenは説いた。続く本作品BD では双方の要素が融合され,中心的登場人物R.P.W.は他の登場人物との対話を通して甥の事件に対するJeffersonの深い苦悩を知り,Jeffersonと共にR.P.W.自身が認識を変化させていくという特徴がある。小説であるAKM,WET に比べ,詩であるBD では実験的な手法が用いられており,作者Warrenの思考が様々な登場人物にうまく分散されて表わされている。物語が真空状態で象徴的な言語を用いて展開され,Jeffersonに仮託されたアメリカ的理想主義そのものが周囲の人物との関係のなかで吟味される。Jeffersonは自身の人間性への信頼が周囲の人物を死に追いやったことを悟る。一方でR.P.W.は当初はJeffersonを非難していたものの,次第に彼の内的変化を知って自身も認識を変化させている。本発表では,R.P.W.とJeffersonが罪のもつ意義に思いを致して他者に対する認識を変えていく軌跡を,登場人物間の対話のなかに探る。

BD は初版から26年後に大幅に改訂されて再版された。好評を博して版を重ねた1953年版に対し,1979年版は初版のみに終わったものの,作者自身はこの第2版が決定版であることを,序文やインタビューで繰り返し強調している。この発表では,ひとつの完成された作品として解釈するという観点から1979年版を採用するが,適宜,1953年版との比較を試みる。1953年以前のWarrenは,詩集としては事実上の私家版2冊と自選詩集1冊を出したのみであったが,1953年BD 出版以降は,小説よりも詩と社会評論に軸足を移し,没するまでに12冊の詩集を出版し,そのうちの2冊はPulitzer賞に選ばれた。1979年のBD 第2版までに,Who Speaks for the Negro?, The Legacy of the Civil War, Democracy and Poetry といった評論も出版している。彼はBD で取り上げた,アメリカ的オプティミズムに代わる価値観を,これらの評論でも粘り強く追究した。Warrenが1953年にBD で提起した,“a human constant” としての人物が織りなすドラマに表象された問題は,彼自身のなかで変わらぬ重要性を保ち続けたのである。