1. ケイト・ショパンの「動物目線」

ケイト・ショパンの「動物目線」

神戸市外国語大学 辻本 庸子

 

ケイト・ショパンは代表作『目覚め』(1899)の出版前後に、人間のような動物(馬)や、動物のような人間を主人公とする短編を著して、人間の持つ「アニマリズム」に焦点をあてている。彼女が時代に先駆け、女性として、また個としての「目覚め」を小説化した作家であったことは、いまさら言うまでもない。大胆に女性のセクシャリティも描きだした。しかしそれだけでなく彼女には「動物目線」ともいうべきものがあったように思う。単に動物愛護や動物好きというのではない、己れが動物として視るという意識のあり方。

19世紀末、ダーウィンに続く多くの科学者たちが、女性は男性とは異なり、動物なみの劣等人種だと公言した。その種の見解は、アリストテレスから始まる長い歴史を持つ。だからこそC・J・アダムスは、『女性と動物』(1995)の序において、「動物を理論づけることがフェミニズムにとって不可欠なことだ」と述べている。

女性の、そして人間の持つ動物性を肯定する。いや、むしろ動物のようにあることにこそ意義を認める、そのような作品を書いたショパンが当時、強い批判を浴びたことは至極当然といえるだろう。彼女の作品における動物表象に着目し、その「動物目線」を考察してみたい。