1. 3.H. D.とMarianne Mooreの”Crystalline Poetry”―― 1910年代、1920年代の詩を中心に

3.H. D.とMarianne Mooreの”Crystalline Poetry”―― 1910年代、1920年代の詩を中心に

上野 葉子 活水女子大学

 

同じ世代のアメリカの詩人H. D.とMarianne Mooreの作品は、20世紀初頭のモダニズム台頭の動きを無視しては理解することはできない。この二人の詩人の初期の作品はともに、正確な描写、明快なイメージ、凝縮、客観性、個人的な感情の抑制、といったモダニズムの考えと一致する特徴を備えていた。特に、H. D.の詩は、イマジズムの理想として評価されていた。Mooreの詩は独自の特徴を色濃くもっていたが、それでも、Mooreはおおむねイマジズムもしくはモダニズムの傾向に従おうとしていた。一方、このモダニズムの”hard style”は、彼女たちのジェンダーの点から見ると複雑な問題を伴うものでもあった。H. D.とMooreはどちらも、ロマン派的な美学、すなわち感情の過剰な吐露、優しい美への耽溺といったものに惹かれていたが、それらは女性的なものとしてモダニストたちからは排斥される傾向にあったため、彼女たちもまたこうした性質を自らの詩から排除しようとしたのである。

イマジズムの時代の終わり頃から、この二人の詩人の詩は変化を見せ始める。彼女たちの詩は、以前ほどは凝縮されていないものになり、イマジズムのコンパクトな詩のもつ束縛を打ち壊す、巨大なエネルギーを表現するようになる。より饒舌で散漫なスタイルを採用するようになったのと同時に、彼女たちは、「女性的」とみなされてモダニズムの詩からは排除された要素を復活させた。H. D.は、頻繁に女性登場人物の声を使用して女性の感情を表現した。また、男性のモダニズム詩人が女性的と呼んで捨て去ることを決めた退廃的な美を詩の前面に置いた。Mooreは、彼女の最も長い詩”Marriage”で女性登場人物に語らせ、家父長制について批判させた。Mooreもまた、以前には控えていた退廃的な美を描き、一般的に女性的と考えられている花の美しさを堂々と扱うようになった。

二人の詩人のイメージは、彼女たちの詩とモダニズムの関係を暗示している。二人は文字どおり「硬質な」イメージ、すなわちクリスタルや氷を描くのを好んでおり、その傾向は、彼女たちがモダニズムの凝縮された硬質なスタイルを支持していたことを反映すると思われる。イマジズムの時期の後でさえ、この詩人たちは、「クリスタルのような」(crystalline)イメージを強調して描いた。H. D.の詩の中の「クリスタルのような」物質は、自分の詩の冷たく硬い表面の下には熱い情熱を潜んでいるのだという彼女の主張として読める。Mooreの「氷のタコ」という「クリスタルのような」イメージは、H.D.のイメージとは違って、硬く静止していながらも、しなやかで捉えがたい。このタコの性質は、Mooreが表面的にはモダニズムの”hard style”を受け入れながら、同時に自分自身のスタイルを柔軟に発展させていたことを反映していると思われる。