1. 3.自由と奴隷制の相互関係――Robert Penn WarrenとFaulknerにおける南北戦争

3.自由と奴隷制の相互関係――Robert Penn WarrenとFaulknerにおける南北戦争

松岡 信哉 龍谷大学

 

Eric FonerはThe Story of American Freedom において、アメリカにおける自由はつねに奴隷制との関わりで定義されてきたと述べている。南北戦争前の南部社会においては、自由とは労働からの解放を意味し、自由の基盤とは土地と奴隷を所有してそこから収益を得ることであった。奴隷制を基礎とし、労働力の流動性を欠いた南部社会の構造について、南北戦争以前の北部の議論では、こうして生み出される南部の経済停滞が、連邦全体の経済発展を妨げうると危惧していた。当時の北部諸州では資本主義の発展に伴って自由労働が社会の構成原理となりつつあり、無賃金で労働力を確保する南部奴隷制は、北部の資本主義的自由労働市場にとっては脅威であった。本論では、他者の隷属に基づく自由と資本主義原理との関係を、Robert Penn WarrenとWilliam Faulknerという二人の南部作家の作品を通して検証してゆきたい。

Warrenは南北戦争百周年の1961年に、北軍の大義に共感して南北戦争に赴くドイツ系ユダヤ人Adam Rosenzweigを主人公とするWilderness を上梓する。この物語では南北戦争とアメリカにおける自由の問題が、外部の視点から考察されている。Adamにとって北部は基本的人権に基づく自由を体現し、南部は野生の自然、文明未満の荒野として表象される。この二項対立図式は、北部の欺瞞が明らかになるにつれて崩壊し、Adamは南北を貫く共通原理が実は存在することに気づく。また、Wildernessの終幕でAdamに訪れる啓示は、人や財が特定の地域などとの結び付きから自由になる、資本主義時代の流動性を透視しており、拮抗する勢力の間に立つという思想を資本主義の時代のある種の倫理規範として堤示している。

WarrenのAll the King’s Men の第四章のCass MasternのエピソードとFaulknerのAbsalom, Absalom! には、貧しい境遇からプランターに成り上がる白人男性が登場する。Cass MasternとThomas Sutpenの人生は南北戦争によって転落へ向かうが、そこにもやはり自由と奴隷制の問題が見て取れる。奴隷労働は南部白人プランターの自由のインフラをなすが、奴隷や動物なみの暮らしと形容される境遇から貧乏白人が成り上がって自由を得ようとするとき、彼らは他者の自由を搾取せねばならぬアポリアに陥る。他者の不自由に基づく自由は持続不可能であることを、この二つの物語は示している。