1. 2.Faulknerの小説に於けるスポーツの要素について

2.Faulknerの小説に於けるスポーツの要素について

海上 順代 東京都立産業技術高等専門学校

 

William Faulkner作品に見られる設定やメタファーにはgameを連想させるものが多い。この点を考えるにあたり参考となった研究書には、hunting等も含めたgameやgameを連想させる状況をスポーツの要素として論じているものがある。そうした先行研究を踏まえ、本発表ではWilliam Faulknerの小説のテキストに現れる「スポーツの要素」と、「南部に於ける男性登場人物の価値観」の関連について論じることを目的とする。そして、スポーツの要素として「fair playの精神」に注目し、Faulknerの南部社会に登場する男性キャラクターの価値観にfair playの概念が根ざしている点について論じる予定である。

発表を進めるに当たり、HawthorneからFaulknerといった主要なアメリカ文学作品のスポーツの要素について論じた研究書Christian K. Messenger著Sport and the Spirit of Play in American Fiction: Hawthorne to Faulkner (1981)で展開される“The Popular Sports Hero”、“The School Sports Hero”そして“The Modern Ritual Sports Hero”といったアメリカ文学のSports Heroのタイプの変容を参考にする。そして、この研究書の論を踏まえ、スポーツの世界に於ける「法」である「ルール」と「儀式性」の関連に注目したい。

上記の研究書から、文学作品でスポーツの要素が広い意味合いで捉えられると分かるが、本発表でもFaulknerの主要作品の様々な状況や描写に、スポーツの概念が読み込めることを指摘したい。そして、中心的登場人物となる男性キャラクターの価値観から、fair playの精神を読み取ることが出来、その価値観に基づいた彼らの言動には儀式的な部分が多いのである。

具体的に扱うFaulknerのテキストとして、年代順にThe Wild Palms (1939), The Hamlet (1940)(主にBook Two : “Eula”), Go Down, Moses (1942)の “The Bear”を予定している。これらの作品に登場する男性登場人物像を再検討することになるが、fair playの精神を論じるに当たり、アメリカ文学に見られるゲームの要素について論じた研究書Michael Oriard著Sporting with the Gods: the rhetoric of play and game in American culture (1991)を参考にする。この著書は、Faulkner作品の批評書ではないが、アメリカ文学初期の作品から現代までの作品を扱い、fair playについても言及がある。そしてそのplayとgameの論理は「儀式性」に通じる部分があり、先に挙げた三作のFaulkner小説の登場人物像を再検討する上で有益と思われる。

再検討をする対象となる登場人物としては、Harry Wilbourne, the tall convict, Labove, Ike McCaslinを予定している。彼らの言動を見ると、ある種のルールに沿って行動すること、認められる行動と認められない行動について意識的であると分かる。そして、認められる行動には、独自の形式があるかのように見なしているようである。その「ルール」や「ルール」に根ざした「形式」は、「儀式的なもの」として社会で受け入れられていると考えられるのである。そして、彼らの「ルール」や「形式」を重んじる傾向は、スポーツのfair playの精神に通じているのである。

以上の点を踏まえ、Faulkner小説に於けるスポーツの要素を、fair playの概念に焦点を当て、再検討したい。