1. 4.地理的想像力の変遷―Pound から Snyder へ

4.地理的想像力の変遷―Pound から Snyder へ

和光大学 遠藤 朋之

 

本発表においては、詩におけるモダニズムの創始者である Ezra Pound の「地理的想像力」とも言える時間認識が、いわゆる “Pound Tradition” の詩人のひとり、Gary Snyder において、いかに受け継がれていったか、あるいは、 Snyder がいかに Pound の「地理的想像力」を北カリフォルニアという場で実践に移しているのか、それを検証してみたい。さらに、「地理的想像力」を「実践」へと開いていった結果、必然的に生まれる 「地域生態主義(“bio-regionalism”)」 の思想へのアプローチとしてみたい。

Pound は、その詩人としての出発点から、時代を水平的にとらえる意識、「地理的想像力」とでも呼ぶべき意識をもっていた。この意識は、時間を通時的ではなく共時的にとらえようとする意識のことである。さらに、このことは「地中海」というよすががあってこそ可能になった考え方である。この詩人がはじめて物した書物、ロマンス文学の研究書であるThe Spirit of Romance において Pound は、 “It is dawn at Jerusalem while midnight hovers above the Pillars of Hercules [Gibraltar]. All ages are contemporaneous” と語っている。前段は地中海の東端と西端を引き合いに出し、地中海が経度、つまり東から西への時間の推移によってその様相を変えることを語っているように思われる。しかし、その直後にくるのは、「あらゆる時代は同時代だ」という断言である。つまり Pound は、エルサレム、そしてジブラルタルでの様相の違いは、地中海という一平面上のたんなるヴァリエーションにすぎない、と語っているわけだ。

このことからわかるのは、Pound は「地理的想像力」を「文学」という枠にあてはめて語っている、ということだ。 Pound にとって、「地理的想像力」は、古今東西の文学作品を等価のものとして捕えるためのメタファーである。

一方 Snyder は、Pound から受け継いだメタファーとしての「地理的想像力」を、北カリフォルニアという地勢においてリアリティとして語る。つまり、Pound にとってはメタファーである「地理的想像力」を、Snyder は「実践」として語り、それを詩にしている。

本発表においては、まずは、Pound の「地理的想像力」がどのようなものであったか、初期の散文、そして実作において検証する。その上で、Snyder が Pound のメタファーとしての「地理的想像力」をいかに「実践」へと導入していったか、それを探ってみたい。Snyder の作品は、初期のものを主に扱う予定だが、そのほかにも、 Mountains and Rivers Without End からの作品も視野に入れておきたい。