1. 場所を語る/場所が語る――環境文学における語り直し

場所を語る/場所が語る――環境文学における語り直し

金沢大学 結城 正美


本シンポジアムの「語り直し」というテーマは、現代作家で民族植物学者であるGary Paul Nabhanの次の言葉から着想を得たものである――“To restore any place, we must also begin to re-story it.”場所の力を取り戻すには、その場所を「語り直す」ことが必要だ、という見解である。この場合、二通りの語り直しが考えられる。一つは、かつて語り継がれ、現在は忘却されたかされつつある物語を復活させる、という意味である。もうひとつは、従来の場所観の批判的検証にたち、場所との関係を刷新するというものであり、これには場所との物語を創造するという面がある。

私の報告ではまず、「場所」と「語り直し」をめぐるナブハンの見解を、Cultures of Habitatをはじめとする彼の著作と照らし合わせたり、現代アメリカ環境文学の流れに位置づけたりしながら、多層的に読み解きたい。そして、現代における場所の語り直しの具体例として、アメリカ西部の現代作家の作品を取り上げ、語り直しの手法(レトリック等)や意義を検証する。また、1990年代以降興隆が目覚ましい環境文学において、「場所」と「語り直し」が持つと思われる文学的・文化的・政治的意義についても検討したい。